調度に合わせて拡大された絵 ロッソ「デイ祭壇画」

写真館
05 /22 2014
絵画作品には、様々な理由によって、その形態を変えられて現在に至る作品があります。
フィレンツェのパラティーナ美術館所有の作品の中にその例を見ていきます。

ロッソ・フィオレンティーノ「デイ祭壇画」1522 パラティーナ美術館所有
デイ祭壇画
これもサルトの「スカーラの受胎告知」と同じく、所有者が変わり、その意向によって形態が変えられた作品です。

サント・スピリト教会の自家の礼拝堂のために、デイ家はラッファエッロに作品を依頼しました。しかし彼が作品を未完のままにローマ旅だってしまったため、代わりにロッソ・フィオレンティーノに依頼しなおしました。
ロッソの作品はヴァザーリによって、特にその色の生き生きとした色彩が賞賛されました。

17世紀にはメディチ家のフェルディナンド皇子が興味を持ち、サント・スピリト教会の修道僧にコピーを渡し、オリジナルをピッティ宮殿に運びました。
そして展示場所の調度に合わせて、四方向にそれぞれ50cmほど拡張されました。
その拡大された部分が今では、はっきりとわかるようになっています。
サイズが変えられた(特に拡張された)作品は、その跡がわからないようにするのがもちろん当然の処置で、この作品のようにはっきりわかることは珍しいですね。

祭壇画は「聖なる会話」を扱っています。椅子に座ってイエスを抱いているマリア様を中心に、なんと10人もの聖人たちが集まっています。この点では、未完となったラッファエッロの「天蓋の聖母」に似たスタイルです。
聖人たちは…
san Pietro 本と鍵を持っている
san Bernardo di Chiaravalle 白い服
san Ranieri
sant'Agostino 司教の服
san Rocco 巡礼杖
san Sebastiano 半裸で後ろ手に縛られている
san Giuseppe
san Maurizio
santa Caterina d'Alessandria 中心に跪いている
最後のカテリーナに関しては、彼女の殉教のシンボルである壊れた車輪が足元にありますが、これは後世に書き加えられたもので、この聖女の正体はよくわかっていません。
描かれているのは、デイ家のメンバーと同じ名前をもった聖人たちです。

この作品は様々な点で、伝統を破っています。
ピラミッド型ではない聖人の並び、不自然な服の襞、色の透明感と玉虫色のような使い方、聖人によっては険しい表情、暗く感情表現のない目。
この時代のもっともアバンギャルドと考えられていた「マニエラ(手法)」がここにあります。ロッソ・フィオレンティーノとポントルモが中心のマニエリズムの作風です。

参照
Marco Chiarini, Galleria palatina e Appartamenti Reali, Sillabe, Livorno 1998. ISBN 978-88-86392-48-8
Antonio Natali, Rosso Fiorentino, Silvana Editore, Milano 2006. ISBN 88-366-0631-8
Elisabetta Marchetti Letta, Pontormo, Rosso Fiorentino, Scala, Firenze 1994. ISBN 88-8117-028-0
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。