ヴィニャーリ作「善きサマリア人」

フィレンツェ市
05 /25 2014
フィレンツェのサンマルコ美術館にヤコポ・ヴィニャーリ作「善きサマリア人」という作品があります。
小食堂に入る手前の廊下、聖アントニーノの中庭と聖ドメニコの中庭を繋ぐ空間に展示されています。
samaria
「善きサマリア人」は、新約聖書でキリストが語った、たとえ話です。

まずイエスと律法学者のあいだの会話から始まります。
律法学者「永遠の生命のために何をすべきか」
イエス「律法にはどうあるか」
律法学者「神への愛と隣人への愛である」
イエス「正しい、その通りにせよ」
律法学者「では隣人とは誰か」
この会話のあとに、イエスがたとえ話をするのです。

「ある人が強盗に襲われて身ぐるみはがれ、半死半生となって道端に倒れていた。
祭司、レビ人といった神殿にかかわる人々はこの人を助けずに通り過ぎた。
しかしユダヤ人から大変に嫌悪されていたサマリア人は、この人を助けた」

イエス「誰が怪我人の隣人であるか?」
律法学者「助けた人(サマリア人)である」
イエス「行って同じようにしなさい」

サマリア人はイスラエル人とアッシリアからの移民の混血で「イスラエル人の血を穢した者」といわれ迫害を受けていた人々です。

ヴィニャーリの作品ではサマリア人が怪我人に何か注いでいる様子です。赤っぽい液体、葡萄酒と油を傷口に注ぐというのは中近東において一般的な傷の治療法でした。

このエピソードは博愛慈善を表しているのか、人種差別の否定なのか。あるいは両方の意味があるのかもしれませんね。

ヤコポ・ヴィニャーリという画家は17世紀にフィレンツェにおいて、エレガントで壮麗な作品を描いていました。当時ヨーロッパで一番洗練されていたメディチ家の好む作風でもありました。17世紀フィレンツェ絵画の代表的な存在です。マッテオ・ロッセッリの工房で修業したヴィニャーリは古典な作風から出発して、チゴリからカラヴァッジョの作風の間接的影響を受けます。さらにサルヴァトーレ・ローザの作風へと変化を遂げていきます。

参照はこちら
finestre sull'arte
『新聖書注解 新約 1』364頁 - 365頁、いのちのことば社(1973年) ISBN 9784264000051
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。