ロッソ作「エテロの娘を守るモーゼ」

シニョーリア広場地区
05 /27 2014
「井戸のサマリア人」について書きましたが、井戸が出てくる場面ではもう一つ思い浮かぶのが旧約聖書の「エテロの娘」です。

「エテロの娘を守るモーゼ」ロッソ・フィオレンティーノ作 1523〜1524 ウッフィツィ美術館所蔵
モーゼとエテロ1

モーゼは井戸でミデヤンの祭司エテロの7人の娘たちに出会います。彼女たちは父の羊の群れに水を飲ませようとやってきたのです。ところが羊飼いたちに妨げられ、追い払われそうになったので、モーゼたちは彼女たちに加勢して羊たちに水を飲ませました。こうして彼はエテロの家に迎えられ、娘の1人を妻にめとりました。

ロッソ・フィオレンティーノの作品はヴァザーリによればジョヴァンニ・バンディーニのために描かれました。バンディーニは16世紀の彫刻家で、バッチョ・バンディネッリの弟子であった人物です。フィレンツェ大聖堂工事管理局から多くの作品の依頼を受けました。

そして作品は1530年のころにフランス王フランチェスコ1世に贈られました。イタリアに作品がいつ帰ってきたのか記録がなく、オリジナル作品は失われて、ウッフィツィ美術館展示の作品はコピーではないかとする学者もいます。

裸の男性たちの群像は、ミケランジェロがヴェッキオ宮殿に描こうとした「カッシナの戦い」のカルトーネから影響を受けているものと考えられます。
作品が描かれたとされる年代は、ちょうどロッソがサン・ロレンツォ教会の「マリアの結婚」を描いていた時期ですが、その後のローマ滞在時と描いたと推定する学者もいます。

ロッソが描いたこの場面ではモーゼが羊飼いの上にこぶしを振り下ろすその瞬間です。
手前にいる二人の男性は短縮法で描かれていて、右の男は痛みのために顔を歪めています。左の赤いマントを羽織った男性は怒りの表情を浮かべています。
絵画は前景、中景、後景と三つに区分されていますが、画面が人物で埋め尽くされているため、空間の奥行きはそれほど感じられない画面となっています。

参考文献
Elisabetta Marchetti Letta, Pontormo, Rosso Fiorentino, Scala, Firenze 1994. ISBN 88-8117-028-0
Gloria Fossi, Uffizi, Giunti, Firenze 2004. ISBN 88-09-03675-1
Antonio Natali, Rosso Fiorentino, Silvana Editore, Milano 2006. ISBN 88-366-0631-8
西洋美術解読事典 ジェイムズ・ホール 河出書房新社
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。