シエナ大聖堂 聖水盤

シエナ県
02 /03 2015
聖水盤(acquasantiere)とは、教会の内部、入り口付近の壁か柱に取り付ける水を入れる容器です。台の上に置いてあることもあります。信者は出入りの都度に右指に聖水をつけて十字を切ります。

シエナ大聖堂の2つの聖水盤はカッラーラの大理石を使った、アントニオ・フェデリギの作品です(1458年、1467年)フェデリギはシエナ出身のルネッサンス時代の彫刻家兼建築家で、古代の作品からインスピレーションを受けています。ヤコポ・デッラ・クエルチャの元で修行した可能性もあります。
高さ140cm、直径80cm
教会に入って身廊の柱の横に設置されています。
シエナ大聖堂9
シエナ大聖堂でも重要な美術品の一つとされます。
制作の過程での正式な記録が残っていませんが、以前は木製の聖水盤があったという証言や、1458年と1476年の目録から制作年数が推定されています。

作者についてはフェデリギの作風であるということと、この時期に彼がシエナ大聖堂の建築主任であることから、フェデリギに帰すものと考えられます。
大聖堂建築では全ての支払いの記録があるのに反して、この作品の支払い記録がないのは、フェデリギの建築主任としての給料に聖水盤の支払いも含まれていたからだと考えられます。

2つの聖水盤は同じ形で同じ大きさになっています。床に嵌め込まれた丸いベースの上に乗っていて柱身は下のほうが太く、上には溝を外側に彫った水盤が乗っています。

2つの聖水盤は、装飾は違ったものになっています。
右側の作品では水盤にケルビーニ(上級天使)とイルカが交互に彫られています。柱身には亀の頭を切り裂くドラゴンとフルーツの花綱が交互に彫られています。柱身のベースは花綱で装飾された4つの獣の足が支えています。
さらにその下には裸身で囚人の姿の2人の女性と2人の男性がいます。

左の聖水盤は水盤の部分は貝殻と魚、ケルビーニの頭、棕櫚、下部には蛇を掴む鷲が彫られています。柱身は三角形のベースの上にあり、イルカに支えられるケルビーニです。最も下部はフルーツと植物のエレメントで飾られています。

図像学では2つの聖水盤のモチーフは1つのメッセージを構成していると考えられています。
右の聖水盤 原罪とともに堕ちた人間が神の恩恵から離れ、物質世界に囚われる。
左の聖水盤 地上でも神の恩恵を見つけることのできる人間の解放と、イルカ(救世主のシンボル)に押されて高い場所に戻り、鷹(伸ばした翼が救済のシンボル)が悪魔(蛇)を倒して天国に出発する様子。

2つの聖水盤ともにルネッサンス時代のリアル感のある表現に満ちています。裸体もバランス感覚に富んでいて、大聖堂にある15世紀の彫刻の中でも優れた作品です。

参照 Enzo Carli, Il Duomo di Siena e il Museo dell'Opera, Firenze, Scala, 1999.
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。