緑の顔色をしたマリア様の秘密

芸術を読み解く
03 /12 2015
ピエンツァで現地のガイドさんが言いました。
「中世の板絵を見ていると、マリア様や聖人の顔が緑色をしていることがないかい?」

たしかに「緑がかっている」顔色の人物がいます。
これはジョット作「オニッサンティの聖母子」
ジョット
マリア様も天使たちも緑色の顔?

「あれはね、ベースに緑色を塗って、その上に色を塗り重ねるんだけど、上の色が落ちてしまうと緑色に見えるのさ。修復されると顔色がもとに戻る」

なるほど。色が輝いていていかにも修復しましたという作品では、緑ではなく発色のよい顔色の人物像になっています。

チェンニーノ・チェンニーニによれば、肌色部分の塗り方は
(1)緑土に鉛白を混ぜた色で肌色部分を2度にわたって広く塗る

(2)verdaccio(ヴェルダッチョ「黄、黒、緑の土を混ぜたもの」あるいは「黄、黒の土とバーミリオン、サンジョヴァンニの白を混ぜたもの」)で影の部分を描く

(3)辰砂(しんしゃ)と鉛白を合わせたバラ色を唇と頬に塗る

(4)顔全体に三段階の色でグラデーションをつける(辰砂と鉛白)

(5)(4)の一番明るい色よりさらに明るい色を光があたる部分に塗る

(6)鉛白だけのハイライトを入れる

(7)黒で睫毛や鼻孔を描く

(8)シノピア+黒の暗色で、全体の輪郭部を描く

こんなに何回も塗り重ねるとは!
これらの色が様々な条件で剥がれていって、下塗りの緑が現れたのが、緑色の顔色の秘密というわけですね。

参照 チェンニーノ・チェンニーニによる金地背景及び卵黄テンペラ画の処方

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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。