卵黄を混ぜるテンペラ画は腐らないの?

芸術を読み解く
03 /13 2015
久しぶりに「お客様からよく聞かれる質問」コーナーです。
テンペラ画には媒材として卵が使われることが多かったのですが、そのように説明すると「卵は腐ったり、カビたりしないんですか?」という質問がきます。

まず卵黄テンペラに関してですが、12、13世紀のころからヨーロッパで使われ始め、チマブーエがギリシャからイタリアにこの技法を伝えたという説もあります。
顔料+卵黄以外に、添加物として希酢酸(酒類の発酵によって生じた酢酸を薄めたもの)が防腐剤として加えられることがありました。
また新鮮な卵のほうが固着力が強いので、一回顔料を卵黄と混ぜたら、その日のうちに使い切ってしまうことがチェンニーノの本でも勧められています。

ちなみに卵を使ったテンペラ画法の利点は
◉油彩画のような黄変・暗変がなく、劣化が少ないために数百年前の作品でも鮮明な色彩を保つ。
◉油彩画と違って、絵具の乾きが早く、すぐに塗り重ねていくことができる。
◉数日間乾燥すると水に溶けなくなる。

これらの利点からも卵を使うというイメージから受けるよりも、かなり耐久性のある画法なんですね。

そして「腐る」という現象は腐敗菌によって、有機物(特にタンパク質)が分解して起こります。
卵テンペラも乾く前は腐りやすいそうですが、乾いて水分が抜けると、腐敗菌の繁殖がおさえられることにより、腐らなくなります。つまり「早く乾いて水分が無くなる」というのが腐らない秘密なのですね。

乾いた後でも、湿度の高いところに絵を保管すると、腐ったりカビが生えたりするそうです。
すると美術館でも湿度の調節が必要なんですね。
う〜ん、フィレンツェのウッフィツィ美術館では、毎日たくさんの入場者があるため、館内がむわ〜っとしていることが多いのですが、大丈夫なのでしょうか……??  

   
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。