ポントルモの十字架降下

フィレンツェ市
01 /04 2016
「Il Trasporto di Cristo  キリストの運搬」あるいは「Deposizione 十字架降下」と呼ばれるポントルモの作品は、板絵にテンペラ画で描かれました。サンタ・フェリチタ教会のカッポーニ礼拝堂に展示されています。
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制作は1526〜1528年の頃で、マニエリスムの代表的な作品として名高いものです。

1525年にルドヴィーコ・カッポーニは礼拝堂の装飾をポントルモに委ねました。
教会は一家が住んでいた邸宅の近くにあり、カッポーニは礼拝堂を一家の墓所としたかったのです。
小さなクーポラの中にはヴァザーリによると「父なる神」が描かれていたようですが、これは失われてしまいました。
丸天井のペンデンティブには助手のブロンズィーノにより、4人の福音書記者が描かれています。
そして祭壇には「キリストの運搬」が、西の壁にはフレスコ画の「受胎告知」が描かれています。

ヴァザーリは「影のない」明るい色でまとめられた画法を評価しませんでしたが、20世紀にはこの作品に対して多くの研究が行われました。

作品は木製のバッチョ・ダーニョロの作のオリジナルの額縁の中に収められています。
伝統的に「十字架降下」と呼ばれますが、実際には背景に十字架は表現されていません。従って「キリストの運搬」と呼ぶ方が題材により近くなります。
悲嘆した様子のグループの中で青い洋服を身につけているのがマリア様です。
「ピエタ(イエスの遺体を抱いて悲しむマリア像、コンピアントとも呼ぶ)」というテーマでは、イエスとマリアの身体が接触しているのが普通ですが、ここでは離されています。

それまで美術で表現されてきた「磔刑の後」の幾つかのテーマを統一したもので、例えばラッファエッロの「(ボルゲーゼの)十字架降下」などからインスピレーションを得ています。ラッファエッロのかの作品も「運搬」と「コンピアント」を合わせています。
またアントニオ・ナターリは「聖体」としてのイエスの肉体を表しているのではないかという説を提案しました。絵画作品下の祭壇に降りてくる聖体ということですね。すると同礼拝堂のステンドグラスでも「イエスの運搬」が扱われていますので、テーマの重複を避けていると考えられるというのです。

画面には、ねじり組み入って解けない群像が11人も描かれています。「ひっくり返したピラミッド」形と表現されることもあります。苦しみに満ちた顔、強調された身振り、表現のテンションが強いのも特徴です。
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イエスの体を支えている二人は、まるでその重さを感じていないような様子で、鑑賞者の方に視線を送っています。
「重さを感じていない」というのは、この二人の足が爪先立っているからです。
この二人は天使と考えられ、画面から飛び出して、丸天井の中に描かれていた「父なる神」の元にキリストの体を運ぼうとしているのです。

まるで空中に浮いているかのような左上の女性は、甘い感じにキリストの頭を支えています。また鑑賞者と反対側、マリア様の方を向いている女性はキリストの左腕を支えています。
マリア様は他の人物像よりも大きな面積を使って描かれていて、4人の女性に囲まれています。彼女はまるで気絶する寸前で、運ばれさる息子との距離が開いていくかのような様子です。
マリア様の右下にいる女性(マグダラのマリア?)はハンカチでマリア様の涙を拭おうとしています。
右端の男性はポントルモ自画像ではないかという説もあります。

デューラーの版画のドラマ性、ミケランジェロ絵画の色、ボッティチェリ絵画の重さのない踊っているかのような軽やかな人物の様子など様々な作風の融合が見られる作品ですが、それでいてとてもオリジナリティに満ち革新的です。

参照 Elisabetta Marchetti Letta, Pontormo, Rosso Fiorentino, Scala, Firenze 1994. ISBN 88-8117-028-0

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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。