エリュマントスの猪

芸術を読み解く
06 /30 2016
古代彫刻や神話をモチーフにした作品を鑑賞していると、よく出てくる動物がいます。
「イノシシ」
古代ローマ帝国時代の石棺にも浮き彫りで表現されているので、よくお客様に聞かれるのです。

イノシシが出てくる神話は幾つかありますので、美術モチーフが区別ができるように、それぞれの話をチェックしてみたいと思います。
今回はエリュマントスの猪です。

ヴェッキオ宮殿の500人広間の作品
イノシシ3
エリュマントスの猪は、ヘレクレスの十二功行の一つです。
ヘラクレスは一時的な狂気に駆られて自分自身の子供達を殺した罪を贖うため、人間の王に仕え、その王の要求に応じることをになります。召使いとして人間に仕えることは、オリュンポスの神々の不興を買った神に与えられる罰だったのです。
こうしてヘラクレスは12の課題をこなすわけですが、その中にエリュマントスのイノシシの生けどりがありました。

このイノシシはアルカディアのエリュマントス山に棲み、その周辺の田畑、農村を荒らしたために農民たちに酷く怖れられていました。
ヘラクレスはは雪の吹き溜まりにイノシシを追い込み、綱で捉えたのです。

◉ヘラクレスはイノシシを肩に担いだ姿で表現されるのが普通です。輪縄を首に掛けるポーズもあります。棍棒を使っている場合は物語と違っているので間違った表現です。

ウッフィツィ美術館のヘラクレス像では、足元にぐったりとしたイノシシがいて、その上に棍棒を立てかけライオンの皮をかけているポーズになっています。あれはまた違うイノシシを扱ったものなのでしょうか?生けどりになっていませんものね。
実はあの作品はファルネーゼのヘラクレスをコピーしたものでポーズがそっくりです。ただしファルネーゼのヘラクレスでは棍棒の下は岩、イノシシはいないのです。なのでモチーフを一部変えたわけですが、実際の「イノシシを生け捕りにする」物語には沿っていないものになってしまったんですね。

参照 西洋美術解読辞典 ジェームズ・ホール著
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。