死の勝利

サンタクローチェ地区
12 /07 2016
サンタ・クローチェ教会付属美術館に、元は修道院の食堂であった空間があります。
正面の壁いっぱいにタッデオ・ガッディの「生命の木と最後の晩餐」が描かれています。そして横の壁にはアンドレア・オルカーニャが描いたフレスコ画の破片が6枚、展示されています。
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教会内の右手の身廊の壁にあったもので、16世紀の改築によって塗られた漆喰の下から発見されました。
おそらく1557年の洪水によってかなりの損傷を受けていたものと考えられます。
そのために改築計画を担当したヴァザーリは漆喰で蔽わざるをえなかったのでしょう。フィレンツェの中世のマエストロを尊敬していたヴァザーリが、単なる改築のために作品を無駄にすることは考えにくいからです。

再発見されたフレスコ画はドラマチックな物語を生き生きと表現しています。
場面は「死の勝利」「最後の審判」「地獄」の一部です。

「死の勝利」では、身体障害者、ハンセン病患者、それ以外の原因で苦しんでいるものたちが、死に祈りを捧げています「すべての苦しみから解放してくれるのは死だけ」だと。
登場人物の口から漏れる言葉が、漫画の吹き出しのように書かれています。
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da che prosperitate ci ha lasciati     幸運は我らを見放した
oh morte medicina d’ ogni pena      死こそすべての苦痛の薬
deh vieni a darne ormai l’ ultima cena おいで、最後の晩餐を与えるために

疫病ペストの流行によって苦しめられていたフィレンツェの状況を、生々しく伝える場面です。12万人の人口のうち、8万人がこの病に倒れました。まさに「死が勝利」した町だったのです。
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ちなみにオルカーニャのこの作品は、フランツ・リストの協奏曲『死の舞踏』にインスピレーションを与えたと言われています。
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。