空気のエレメントの物語

シニョーリア広場地区
12 /26 2016
ヴェッキオ宮殿の中にある「フランチェスコの書斎」に関して以前に書いたものを補完する形で、まだ紹介していなかった場面を見ていくシリーズの第6弾です。

メディチ家のフランチェスコ1世が錬金術を研究するために作らせた「フランチェスコの書斎」
イコノグラフィーの点ではなかなか複雑な構成で、なぜそのテーマが描かれたのか判明していない作品もあります。
参照にした「Palazzo Vecchio e I Medici」guida storica di Ettore Allegri e Alessandro Cecchi, studio per edizioni scelteという本は1980年の出版ですが、2016年に実際に書斎に入ってみると、本に紹介されていた順とはちょっと違う形で作品が並んでいることに気づきました。
おそらくこの期間に新しい資料が見つかったか、新しい解釈が有力となり、絵の並び順を変えたのでしょう。
フランチェスコの書斎は絵画作品が取り払われた時代があったので、オリジナルの並び方は推定されているものに過ぎないのです。

さて前置きはここまで。火、地、水に続いて最後のエレメント「空気のエレメント」のアレゴリーの下に設置されている作品を紹介していきます。

作品は上下2段に設置されています。
上段は
「ユノー」 ブロンズ彫刻 バンディーニ作 最高神ユピテルの妻、光と結婚の女神
「ボレーア」ブロンズ彫刻 カンディド作 北風の神

このように光と風、空気に関連した二人の神の像があり、これらに挟まれるような形で
「ダイヤモンド鉱山」フリアーノ作
プリニウス(古代ローマの政治家で「博物誌」の著者)によれば北風の吹く山でクリスタルが形成されると考えられていました。
裸で後ろで腕を縛られている人物が見えますが、これはプロメテウスにつながる意匠と考えられます。
人間に火を与えたプロメテウスは罰としてコーカサス山の岩に3万年の間、鎖に繋がれていました。ハゲワシが彼の肝臓をついばみますが、夜中に内臓は再生を繰り返します。解放された時も鎖の輪を指輪として指にはめることを命じられます。指輪には彼が鎖に繋がれていた岩のかけら(宝石)が付いていたそうです。これが「指輪」の起源の物語です。
ダイヤモンド鉱山

下段には3枚の楕円形の絵画作品があります。3枚とも隠し扉となっていますが、1枚の裏側はフランチェスコ1世の寝室に続いていました。
「サモス島の王ポリュクラテスの指輪」フェディーニ作
ヘロドトスによると、エジプトのファラオはポリュクラテスと同盟を組みましたが、彼が幸運に恵まれすぎていたので不幸に見舞われないように、一番大事にしているものを捨てるように忠告します。ポリュクラテスは宝石で飾られた指輪を海に投げ捨てますが、その指輪を飲み込んだ魚を漁師が釣り上げ、王に献上します。こうして指輪はポリュクラテスの元に戻ってきたのです。
ポリュクラテスの指輪

「イカルスの墜落」フリアーノ作
伝説的な大工ダイダロスと息子イカロスは、クレータ島の王ミノスの不興を買い、迷宮に幽閉されてしまいます。彼らは蝋で鳥の羽根を固めて翼をつくり、空を飛んで脱出しますが、イーロスは太陽に近づきすぎたため、太陽の熱で蝋を溶かされ墜落してしまいます。
イカロス

「ダナエ」トラバッレーズィ作
ギリシア神話のダナエはアルゴスの王女。アルゴス王は孫に殺されるだろうという神託を受け、娘を閉じ込めますが、ゼウスがダナエに目をつけ黄金の雨に姿を変えて彼女を妊娠させます。こうしてダナエはペルセウスを産むことになります。
ダナエ

これでフランチェスコの書斎の作品は全てご紹介したことになります。
書斎は500人広間から入ることができますが、小さな空間ですので人数制限があります。
またガイド付きの「シークレットルート」や「インフェルノツアー」に参加した人が優先ですので、これらのグループがいると入れません。このようなツアーの説明は10〜20分ぐらいで終わりますので、その場合は500人広間の方で待つか、他の部屋を見てから戻ってみましょう。
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。