イルカは尊き魚のモチーフ

芸術を読み解く
06 /06 2017
バルジェッロ美術館の中庭に、様々な彫刻が展示されています。
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古代からルネッサンス、近代彫刻まで。
その中に何点か、イルカを扱ったものがあります。
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古代彫刻のイルカには、まるで人間の顔を持った魚のような表現のものがあります。

こちらは2世紀末の作品、ローマ帝国時代の石棺です。
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1809〜1865年には、バルジェッロ宮殿の外側の噴水として使われていました。上部のイルカは1809年にジョヴァン・バッティスタ・ジョヴァノッツィによって制作、付け加えられたものです。
こちらも古代彫刻に近い人間的な表情をしたイルカですね。

イルカは古代には魚の王と見られていたそうです。
エーゲ海などの海洋文化で親しまれていたモチーフだったとか。

古典古代の主題では、イルカはネプチューンやヴィーナスの持ち物であり、ガラテイア(海のニンフ)の凱旋車を引く動物です。

初期キリスト教では、信者が自らの信仰の象徴としたがイルカのモチーフでした。
「ヨナ書」ではヨナは異教徒の教化のために神から遣わされましたが、その使命を捨てて逃亡します。
神は暴風雨を引き起こして彼が乗った船を転覆させようとしたため、ヨナは同乗者を救おうと海に身を投げます。
「大きな魚」に呑まれて腹の中で懺悔したヨナは3日後に無傷で吐き出されました(ピノッキオの物語が連想されますね)
この物語はキリストの死と復活に重ねられ、キリスト教美術のモチーフとして定着します。そこでカタコンベや石棺に表されるようになったのです。

この「大きな魚」は、イルカやヒッポカンポスとして表現されます。

中世の時代からは紋章にも使われています。メディチのライバルであったパッツィ家も2匹のイルカを紋章に使っていますね。
イルカが魚の中でも最も貴い生物と考えられていたからで、海戦での勝利や忠節、寛容な君主、無条件の保護などのシンボルでした。

ちなみに「イルカ」はフランス皇太子の称号(ドーファン)や、政界の重職の次期後継者の呼び名としても使われています。

参照 「ヨーロッパの装飾と文様」海野弘 パイインターナショナル
   「西洋美術解読事典」ジェイムス・ホール 河出書房
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伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。