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羅針盤
01 /01 2018
いつも『フィレンツェガイド日記』をご愛読いただきありがとうございます。
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現地在住の日本人ガイドがフィレンツェを中心としたイタリアの記事を書いております。皆様がイタリアに興味を持っていただける機会となりましたら幸いです。
natale2016-9
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羅針盤2

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シエナのピナコテーカ ソドマとベッカフーミ

シエナ県
05 /25 2017
シエナの国立美術館、ピナコテーカ(絵画館)を紹介する第4弾です。
大聖堂から近い位置にあるのですが、訪れる人が少ないので静まり返っていることが多いです。
中世〜ルネッサンスにシエナで活躍した芸術家の作品が並んでいます。

今回は15〜16世紀のシエナ派が並んでいる2階の作品です。

第23室 ベッカフーミの影響を受ける以前のシエナ派
◉ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリ「イエスの昇天」「訪問」「王座の聖母」
◉ベルナルド・フガーイ 「聖母被昇天」
◉ジャコモ・パッキアロッティ 「羊飼いの礼拝」
◉ジローラモ・ジェンガ 「ペトルッツィ宮殿のフレスコ画」

第27〜30室 ソドマとベッカフーミ
◉ソドマ
「十字架降下」1510年 シエナのサン・フランチェスコ教会から
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「円柱に縛られたキリスト」
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サン・フランチェスコ教会の修道院のキオストロから剥がされたフレスコ画

ソドマは後期ルネッサンス、マニエリスム期にかかる時代に活躍した画家です。「シエナ派の伝統的様式」に「ローマの盛期ルネサンス様式」を合わせました。ミラノ訪問でレオナルドの影響を受け、実際にこの美術館にあるソドマ作「聖家族」は以前はレオナルドの作品だと考えられていました。
モンテ・オリヴェート・マジョーレのベネディクト会修道院に、ルカ・シニョレッリの仕事を引き継いで描いた「聖ベネディクトゥスの生涯」が有名です。

◉ベッカフーミ
「シナイ山のモーゼを待つヘブライ人」1529〜30年
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シエナ大聖堂の床モザイクのためのカルトーネです。

「三位一体」 1513年
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画家の最初の板絵。サンタ・マリア・デッラ・スカーラ病院中の礼拝堂のために描きました。
三位一体の横には洗礼者ヨハネと福音書記者ヨハネ、聖コジモと聖ダミアーノ(双子の医者の聖人)がいます。
単純化されたボリュームにはフラ・バルトロメーオの影響が、不安を強調した表現にはフィリッピーノ・リッピの影響が、流れるような柔らかさにはソドマの影響が見られます。

「聖痕を受ける聖カテリーナ、聖人ベネディクトとジローラモ」1514〜17年
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モンテオリヴェート修道院から。画家の成熟期の作品です。ペルジーノの荘厳なシンプルさを受け継いだ作品。
聖フランチェスコが聖痕を受けた時にそれを目撃したフラ・レオーネのように、カテリーナの後ろでは尼僧が奇跡の場面を見ています。手前にいるのは聖ベネディクトと聖ジローラモ。

「聖ガルガーノ」
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ベッカフーミはローマを訪問したことがあるものの、ソドマに比べるとシエナの伝統的な様式を守り続けました。「不合理かつ感情的に不安定な」中世の風変わりな作風の路線です。歪んだ遠近感、不調和な色、幻想的な景色…

第25室 16世紀シエナ派
◉ルティーリオ・マネッティ 「聖エリージョの奇跡」
◉フランチェスコ・ヴァンニ 「自画像」「無原罪の御宿り」
◉アンドレア・カゾラーリ  「聖カテリーナの神秘の結婚」
◉ヴィンチェンツォ・ルスティチ「ピエタ」

第26室
14〜15世紀の彫刻の断片が展示されています。

シエナのピナコテーカ ルネッサンス初期のシエナ派

シエナ県
05 /23 2017
シエナの国立美術館、ピナコテーカ(絵画館)を紹介する第3弾です。
美術館の住所はVia San Pietro, 29、大聖堂から近い位置にあります。

今日はルネッサンス時代のシエナ派の作品を見ていきます。
第12〜13室
◉ジョヴァンニ・ディ・パオロ
「磔刑図」「スタッジャの祭壇画」「サン・ニコラの多翼祭壇画」「マエスタ」「書斎のサン・ジローラモ」「謙遜の聖母」など。
タッデオ・ディバルトロの元で修業し、ダンテの作品に添えるイラストを描いた画家です。冷たくて硬い印象の光を使い、伸びた形態が特徴。国際ゴシック様式のジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの影響を受けています。
ジョヴァンニ・ディ・パオロ

◉サッセッタ
「毛織物業同業者組合の祭壇画」「聖母子と2人の天使」など。
本名はStefano di Giovanni di Consoloで、サッセッタという呼び名は18世紀から見られます。文書上の名前を間違って読まれたところ、そのまま定着してしまったと考えられています。最初の活動記録は1423年に遡ります。引き伸ばした人物像や金色の背景、しかしプレデッラ(裾絵)には遠近法を使った背景も見られ、ゴシックとルネッサンスの過渡期の作風です。遠近法については若い頃にフィレンツェのマザッチョやパオロ・ウッチェッロの作品から学んだと考えられます。

第14〜15室
◉フランチェスコ・ディ・ジョルジョ
「受胎告知」「生誕」
ウルビーノにて軍事技術者としてフェデリコ・ダ・モンテフェルトロに仕えたことがある芸術家です。
軍事技術者・構造設計者としても評判が高く、レオナルド・ダ・ヴィンチが彼の元を訪れ、影響を与えたと考えられています。
◉マッテオ・ディ・ジョヴァンニ
「聖母子」
15世紀後半にシエナで活躍した画家で、サンセポルクロでピエロ・デッラ・フランチェスカの多翼祭壇画を完成させました。
◉ネロッチョ・ディ・バルトロメーオ
「聖母子と聖人の三翼祭壇画」
画家であり彫刻家でもあるシエナのルネッサンス初期の芸術家。ウッフィツィにある「サン・ベネディクトの生涯」を描きました。ヴェッキエッタの弟子、のちディ・ジョルジョに弟子入り。
◉アンドレア・ディ・ニッコロ
「羊飼いの礼拝」
ヴェッキエッタの弟子。

第18室
◉ドメニコ・ディ・バルトロ
展示されている「謙遜の聖母」は、記録に残る彼の最初の作品。
モニュメンタルな形態と人物のメランコリーな瞳が特徴的。サンタ・マリア・デッラ・スカーラ病院やプブリコ宮殿といった公共の場所にフレスコ画を残しています。

第19室
◉イル・ヴェッキエッタ
シエナ大聖堂主祭壇のモデルやArliquiera (聖遺物を入れるための、外部を絵で装飾された家具)
ヴェッキエッタは画家・彫刻・彫金師。サッセッタやヤコポ・デッラ・クエルチャ、またフィレンツェのマザッチョやドナテッロに学びました。シエナ大聖堂の洗礼堂のフレスコ画を担当。ピエンツァ大聖堂の「昇天」も彼の作品です。また彫刻ではシエナ大聖堂のチボリウム、シエナ商館のロッジャの聖人の像など。

参照 Toscana. Guida d'Italia (Guida rossa), Touring Club Italiano, Milano 2003

シエナのピナコテーカ ゴシックのシエナ派

シエナ県
05 /22 2017
シエナの国立美術館、ピナコテーカ(絵画館)を紹介する第2弾です。
美術館の住所はVia San Pietro, 29、大聖堂から近い位置にあります。

上の階から時代順にシエナ派の作品が展示されています。

第1室〜2室には初期ゴシック時代の作品(12〜13世紀)が展示されています。

第1室
◉サン・ピエロ教会の磔刑図(12世紀終わり)
◉磔刑図n. 597「サンタ・キアラの十字架」13世紀はじめ
◉テレッサの師匠作「救世主のパリオット(祭壇前部装飾)」1215年
◉グイード・ダ・シエナ作「イエスの変容」祭壇布、布地にテンペラ画法の珍しい作品

第2室
グイド・ダ・シエナと弟子の作品。
彼は1260〜80年の頃にシエナで活躍した画家で、ピザンチン文化の影響を受け、コッポ・ディ・マルコヴァルドに近い作風を持っていました。はっきりとした明暗のエフェクトと抽象的な形態が特徴です。

第3〜4室
ドゥッチョ・ディ・ブオンセーニャとその弟子の作品。当時のシエナ派が高い表現力を持っていたことがわかる部屋です。
◉ドゥッチョの多翼祭壇画n. 28 1300〜1305年
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おそらくシエナのサン・ドメニコ教会にあった作品(聖ドメニコの姿が描かれていることから、そのように推測されています)この作品に関しての資料は非常に少なく、ウンブリアの国立ギャラリーの作品スタイルに似ていることから、同じ時期の14世紀初期の作品を考えられています。ドゥッチョがより洗練されたスタイルを確立し、またフィレンツェ派の作風(ジョットの作品に見られる柔らかい体の立体感)を学んでいた時期にあたります。

第5〜6室
シモーネ・マルティーニと弟子の作品(リッポ・メンミなど)
◉ミゼルコルディアの聖母 シモーネ・マルティーニ 
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マリア様のマントの下は、その加護の恩恵を受けることを意味しています。

第7室
14世紀のシエナ派の締めとして、ピエトロとアンブロージョのロレンツェッティ兄弟、その弟子たちの作品。
◉カルミネ祭壇画 ピエトロ・ロレンツェッティ 1327〜1328年
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14世紀シエナ派の代表的な作品の一つです。
王座のマリア様は彼の友人であったティーノ・ダ・カマイーノがフィレンツェの洗礼堂のために彫った「信仰(の偶像)」によく似ています(フィレンツェ大聖堂付属美術館所有)
プレデッラ(裾絵)は、まるで細密画のように細かく描き込まれています。背景も物語性を出すのに一役買っています。
テーマは預言者エリヤの物語や、カルミネ修道会の会則の認可の場面です。

次回は同美術館のルネッサンス時代の作品を紹介します。

シエナのピナコテーカ 忘れられた絵画館

シエナ県
05 /21 2017
シエナで観光客がよく訪れる場所は、カンポ広場と大聖堂。
時にはカンポ広場のプブリコ宮殿内の美術館やマンジャの塔に登ることもあります。また大聖堂広場では付属美術館に入ったりもします。今日はあまり観光客が訪れない貴重な場所をご紹介します。

大聖堂からそれほど離れていないのに、観光客から忘れ去られたように静まり返っているピナコテーカです。
ピナコテーカとは「絵画館」のこと。
国立美術館で、シエナ派の作品がずらりと並んでいます。

美術館は1932年に公開され、中にはそれ以前からシエナの美術専門学校l'Accademia di belle arti di Sienaに保存されていた作品も展示されています。

美術館の中庭にある井戸
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場所はサン・ピエトロ通りのブリジーディ・ブオンシニョーリ宮殿の中になります。
ブオンシニョーリ宮殿は15世紀に建設されましたが、中世の時代のシエナの町の公共の建築のファサードスタイルとなっています。
ブリジーディ宮殿はさらに古く14世紀の建築です。古くはパンノッキエスキ家の邸宅として使われていました。

ピナコテーカのコレクションの核となるのは18世紀の大修道院長ジュゼッペ・チャッケーリが収集した作品です。修道院の廃止が相次いだ時期にコレクションを増やしていきました。
19世紀中頃、ここにスパンノッキのコレクションが加わることになります。
1930年には現在ピナコテーカがある場所に移されます。
1932年に美術館が一般公開された折に時代順に展示され、中世から現代までの、いずれもシエナ関連の絵画作品が置かれています。

13〜18世紀のシエナ絵画の変化を見ることができる美術館です。
最上階にはスパンノッキコレクションが、3階から時代順に下の階に進んで行く見学順となります。

美術館最上階の窓から見ることができるシエナの風景。
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次回はピナコテーカの絵画作品をご紹介します。

伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。