メディチ宮のフィンランド人

enjoyモダンアート
04 /25 2017
今日はメディチリッカルディ宮殿の中庭から入った部屋で行われている小さな展示会をご紹介します。
「Un finlandese alla corte dei Medici メディチ宮のフィンランド人」展(2017年3月23日〜6月4日)
フィンランド独立100周年記念に関連したものです。
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ムラーノ(ヴェネツィア)のマエストロとフィンランドのアーチスト達のガラス作品と絵画作品が90点も展示されています。
テーマは「自然と建築」

絵画とガラス作品が呼応する面白い展示方法です。
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ミケランジェロへのオマージュとして部屋のインスタレーションを行なったのがフィンランドの芸術家Markku Piri、デザイナー、舞台美術家、画家として活躍している人物だそうです。

「噴水」という題名のガラス作品群
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この展示はフィレンツェから始まり、ローマ、ヴァネツィアを展示場所を移していく予定だとか。

メディチリッカルディ宮殿、最近は中庭まで自由に入れるようになっているらしく、この展示会もチケットが要りませんでした。メディチ本宅の中庭を見学したらついでにいかがですか?

参照 Tra pittura e design le opere di Markku Piri a Firenze

死と再生の神アッティス

シニョーリア広場地区
04 /24 2017
ウッフィツィ美術館最上階の廊下に次のような古代彫刻が設置されています。
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不思議な服装をしています。この服、他の芸術家の作品でも見たことがあるような…?

2世紀頃に彫られたこの作品の名前は「Attis」
アッティス!そういえばバルジェッロ美術館に展示されているドナテッロの作品に同名のものがあるはず。
ドナテッロの作品がこちら。
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ドナテッロの方は「アモル」あるいは「アッティス」となっていますので、テーマが明確ではないのですが、確かに服装が似ています。

もともとアッティスはフリギア(トルコ)の死と再生を司る神です。
次第にギリシャや古代ローマにもアッティス信仰が広まって行ったとか。
アッティスは素晴らしい美しさを持った若い羊飼いでした。キュベレ(小アジアの豊穣と大地の女神)に愛され、純潔の誓いを破った罰に松に変身させられます(正気を失って自ら去勢し、松として蘇るという劇的な展開です)
「衰えも滅びもしないもの」=「常緑樹である松」死と再生の神と呼ばれる所以です。しかし時代、地域によってアッティスの神話は変化が見られます。
アッティスは有翼の男性だったり、ライオンが牽引するキュベレの戦車の御者の姿としても表現されることがあります。

参照 「Uffizi Le sculture antiche」Giunti

修復された東方三博士の礼拝〜4〜 神殿のモデル

シニョーリア広場地区
04 /23 2017
レオナルド・ダ・ヴィンチ作「東方三博士の礼拝」の修復が終わった記念に開催されている特別展「Il cosmo magico di Leonardo da Vinci: l’Adorazione dei Magi restaurata レオナルド・ダ・ヴィンチの魅惑のコスモ、修復された東方三博士の礼拝」(2017年3月28日〜9月24日)を紹介する第4弾です。

修復が終わって光と輪郭を取り戻したレオナルドの三博士。
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絵画の下の部分は聖母を中心に、人々が驚きの表情や仕草で渦を巻くように構成されています。
他の芸術家たちが伝統的に使ってきた「東方」を表現するために描かれるエキゾチックな動物や、豪華な人物の衣装などは省略され、幼児の姿でありながら祝福を与えるイエスにエピファニア(神性の顕示)というテーマが強調されています。

その背後にあるのは左上の「神殿」と右上の「戦闘図」です。
これはキリスト教以前の世界を表していると言われます。
神殿は「エルサレム神殿(古代エルサレムに存在したユダヤ教の礼拝の中心地で、唯一の神ヤハウェの聖所)」ではないかと考えられています。この部分はヘブライズム(ヘブライ人の文化、宗教、思想)と多神教信仰の退廃を表現しているのです。

レオナルドが作品のために用意した下絵の中には、この神殿の部分を一点透視図法で描こうとした研究を見ることができます。
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とても緻密な構成の上に描かれているのですね。この下絵はウッフィ美術館の所有です。

さらにこの神殿はフィレンツェのサン・ミニアート・アル・モンテ教会をモデルにしたという説もあります。
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確かに教会の内陣の部分に似ているようです。
ただしこの教会はロマネスク様式なので、同じ時代の他の教会にも見られる構造です。フィエーゾレの大聖堂の内陣も似ています。

特別展が終われば、ウッフィ美術館のレオナルド関連の3作品は違う部屋に移されることになります。新しい展示室も楽しみです(ガイドとしては、余裕を持って鑑賞できる空間が用意されていることを祈ります)

修復された東方三博士の礼拝〜3〜 レオナルドの指紋

シニョーリア広場地区
04 /22 2017
レオナルド・ダ・ヴィンチ作「東方三博士の礼拝」の修復が終わった記念に開催されている特別展「Il cosmo magico di Leonardo da Vinci: l’Adorazione dei Magi restaurata レオナルド・ダ・ヴィンチの魅惑のコスモ、修復された東方三博士の礼拝」(2017年3月28日〜9月24日)を紹介する第3弾です。
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5年半に及ぶ修復では、まず画面を暗くしている釉薬やそこにこびりついた汚れの層を取り除くことから始めりました。この時点で画面に残されていたレオナルドの指紋や手のひらの皺のあとが発見されたそうです。
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また作品の保存において問題があったのは地盤の板の構造です。
細かく検査が行われ、細菌の繁殖によって弱くなった裏面の横板の動きがチェックされます。

そして汚れを取り除くことによって判明した、色彩が脱落している部分は上書きによって埋められます。
これはごくごく小さい面積の上塗りだったそうですが…
修復には「保存」を目的にして手を付け加えない方法と、手を付け加える「invasivo 侵略性」の修復があります。ここでは後者も用いられたと解釈できます。
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修復前と比べると人物や動物、建築の様子がはっきりと読み取れるようになりました。

馬や動物を描くことが好きだったと言われるレオナルド。
やはり完成し得なかったヴェッキオ宮殿の500人広間の壁画にも、このような馬の激しい動きを描こうとしていたのでしょうか?
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馬のひょうきんな表情まで読み取れるようになっています。
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レオナルドの「ノンフィニート(未完)」の作品状態は、彼の製作過程を知ることができます、
空には最初の塗りとして淡い青を塗り、人物には赤と茶色、白いハイライトが使われています。
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この右端のハイライトが入っている人物にはレオナルドが自画像を描いたという説もあるそうです。

修復された東方三博士の礼拝〜2〜 蘇った輪郭線

シニョーリア広場地区
04 /21 2017
修復が終わりフィレンツェのウッフィ美術館にレオナルド・ダ・ヴィンチ作「東方三博士の礼拝」が戻ってきたため、2017年3月28日〜9月24日の期間、特別展が開催されています。
特別展「Il cosmo magico di Leonardo da Vinci: l’Adorazione dei Magi restaurata レオナルド・ダ・ヴィンチの魅惑のコスモ、修復された東方三博士の礼拝」を紹介する第2弾。

5年半もかかった修復前は作品はどのような状態だったのでしょう?
特別展に修復前の写真(原寸大)が展示されていました。
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この部屋の照明が暗いせいもありますが、人物や馬の輪郭がぼんやりとしか見えない作品でした。

それが修復後…
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こんなに明るい作品になってしまったので、特別展初日に同僚のガイドがこれはコピーなのか?と疑ってしまったのも頷けます。

修復は2011年11月にウッフィ美術館から貴石加工所に作品を移動させるところから始まりました。
数ヶ月に渡って科学的検査が行われ、画面を暗く見せる表面にこびりついたニスと物質の層を解析しました。
こうして2012年10月に表面の汚れを除去する最初のフェーズが開始されたのです。
作業はどの部分を除去するのか、どの部分を保存するのか、選択の連続でした。
このきれいにする段階で、それまで見えなかった作品の詳細が明らかになってきたということです。
特別展で流されている修復のドキュメンタリー映像から。
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こちらも一緒に展示されています。フィリッピーノ・リッピ作「東方三博士の礼拝」
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未完成のレオナルドの作品の代わりにフィリッピーノが15年後に描いた作品です。

フィリッピーノは画像フィリッポ・リッピの息子、ボッティチェッリの弟子にあたります。
彼はブランカッチ礼拝堂のマザッチョの未完作品に手を入れて完成させたこともありました。
マザッチョとレオナルド、ルネッサンスの二人の巨匠を補完したというところから、フィリッピーノの器用さと当時の評価の高さがわかります。

この作品ではフィリッピーノは中央に3人を三角形に配置させています。ボッティチェッリ→レオナルド→フィリッピーノと「東方三博士の礼拝」のテーマにおいて、同じ構図を踏襲しているのですね。

またまた次回に続きます!

伊藤裕紀子

イタリアのフィレンツェ在住24年目。フィレンツェ県とピサ県の公認ライセンスガイド。何年たっても知り尽くせないイタリアの魅力を追求中。個人旅行のガイド、通訳の依頼も請けております。